ソーシャルメディアのROI、必要なのは大体の目安

ソーシャルメディアマーケティングにおける大きなチャレンジ、それはROIの証明です。

ソーシャルコマースのように売上直結型のソーシャルメディア活用の場合は証明しやすいかもしれませんが、例えばファンとの関わりあいを深めるエンゲージメントを目的とするマーケティングでは、「それが本当に売り上げに貢献しているの?」という事になります。

「ソーシャルメディアにROI はあるのか?」というエントリに、ソーシャルメディアのROI をAudi がどう考えているかについてのコメントがありました。

コメントはAudi が、Twitter を活用したキャンペーンに関するもので、そのキャンペーンは、 #Progressis をつけてツイートしてトップに選ばれると、カリフォルニア旅行と、R8の試乗機会、さらに25,000ドルのチャリティを与えられる、というもの

そのキャンペーン告知自体も注目に値するもので、出広費が高いことで有名なSuper Bowl のCM にハッシュタグを表示し(Super Bowl のCM では初)、

Pomoter tweet を購入し、

さらに、ソーシャルメディアのインフルエンサー分析を行うKlout にも協力を仰ぎ

Audi はKlout の協力により、このキャンペーンでリーチすべき人を1,100名を特定した。

とのこと(Klout はこうしたインフルエンサー検索の企業向けサービスを有料で行っているようですね)。

キャンペーンの賞に費やすコストだけでも安くはないのに、告知にも相当のコストがかかっていると言えます。

結果として、Twittterで数多くのツイートが生まれフォロアー数も伸びたようですが、そのROI については、

現在それを測る方法は無い。

と、語るのはAudi のソーシャルメディア&カスタマーエンゲージメントのゼネラルマネージャーDoug Clark 氏。Audi はFacebook上に300万以上ものファンを持つほどの企業ですが、

そこでのEngagement が車のセールスに貢献できていることを証明する数字はなく、さらにAudi はそれを追及することにあまり興味を持っていない。Audi にとってFacebook やTwitter は、「テクノロジーに強い消費者がアクティブで、Engageするブランドを探している」場所であるが、「ファンがAudi を買う傾向があると言えるか?そんなことは言えない」

とのこと。

マス広告に比べれば使っている予算は少なく、全体へのインパクトも小さいのでこうした姿勢をとれるのかもしれませんが、多くの企業にとっては、そうではないと思いますし、効果を何らかの形で計測したいと思うのは当然。

ソーシャルメディアマーケティングのROI は、認知獲得やリーチ(例:何回RTされた)だけではなく、どれだけ関係を深め、好意度を高めることに貢献できたか、というよう側面から測ることも必要でしょう。

そうすることが購入に結び付くであろう、ということは想像できますし、Twitterの質問に答えた企業から購入する可能性が高い、という調査データもあります。

また、このエントリには次のようなコメントも寄せられていました。

ソーシャルメディアのROI を計測することは不可能ではないが、ソーシャルメディアの活動を収益と結び付けるのは簡単ではありません。たとえば雑誌広告のROI を計算することはできますか?もし追跡可能な読者の反応を測る方法があればできるでしょう。

テレビ広告や雑誌広告の場合、ネットの広告と異なり、(見込み)顧客の反応を明確に測ることができません。認知度●●%を獲得するには●●GRPのCM露出が必要というデータをもとに投資額を決め、後に購入者の広告認知調査や、広告の好意度、購入のきっかけになったかどうかなどの調査が行われ、ROI を立証するのが主なやり方だと思います。

ここでポイントになるのが、テレビや雑誌の広告、さらに言えばPRのコストにおいても、このぐらいまでなら投資するのが妥当で、その場合どの程度の効果を期待すべきか、についての大まかな目安や共通認識があることです。

ソーシャルメディアの場合、「それ自体が新しい」ということに加え、認知獲得、顧客対応、傾聴による顧客理解、ブランディング、そしてエンゲージメントなど、他の手法に比べて多面的にインパクトをもたらすため、「どの程度投資可能で、どの程度のリターンを期待すべきか」についての目安が分かりにくいのが現状と言っていいでしょう。

違う言い方をすると、ソーシャルメディアマーケティングのROI はその妥当な目安が一般化してくれば、それによって投資額とその効果の判断がしやすくなるのではないでしょうか?

ご参考: 

ソーシャルメディア成熟度の5段階指標

Maturity

多くの企業がソーシャルメディアでの活動を行うようになってきていますが、その取り組み方は千差万別。

ただし、その「ソーシャル成熟度(social maturity)」に目を移すと、業種、地域、顧客層の違いに関わらず、大企業においては共通の変化を歩みながらビジネスにソーシャルメディアを統合している、というForrester Researchのデータが公開されていました。

「ソーシャル成熟度(social maturity)」は、有名なロジャースのイノベーター理論になぞらえて解説されていました(1000人以上の社員のいる95のソーシャルメディア活用企業、30社以上のあらゆる成熟段階にある企業、既存の調査結果などをもとにまとめられたものです)。

ラガード(遅延者):休眠段階
Forrester社は、5社に1社がソーシャルメディアを活用していないと予測。これらの会社は非常に保守的で、規制が多い、もしくは単に興味がないという傾向があります(非テクノロジーのB2Bなど)。このステージを脱するために、我々はインタラクティブマーケターには「小さな勝利」を積み重ねることをお薦めします。軌道に乗せるためにケーススタディになっるような最良の機会にフォーカスすべきです。

レイトマジョリティ(後期多数採用者):テスト段階
多くの企業がソーシャルメディアを活用している一方、組織的にはポケットの中で開始されるているようなものです。このステージは「混沌が分散している状態」という事ができます。次に進むには、経験のあるインタラクティブマーケターが、「世話人」の役割を果たし、活動を組織横断型なるように調整することが推奨されます(この役割は、ソーシャルメディアストラテジスト等といわれるものであるが、企業は既存のインタラクティブマーケティングチームを通じて成長することが可能であることは留意すべきです)。

レイトマジョリティ(後期多数採用者):調整段階
この時点では、マネージメントはソーシャルメディアから得られるものとリスクを認識し、リソースを割いて管理をはじめ、組織全体で一貫性を持たせ、「分散した混沌」からより中央集権的なアプローチをとるようになります。インタラクティブマーケターには、その運営委員会とともに行動して主要な関係者が基礎を作り、リソース、ポリシー、予算を共有し、長期的な取り組みとして結果の最適化ができるようにすることをお薦めします。

アーリーアダプター(初期採用者):拡大・最適化段階
(スターバックスやベストバイ、コカコーラのような) リーダーたちは、すでにソーシャルな組織を連携させ、プロセスの最適化からより発展した指標に至るまで、ソーシャルメディア活動の最適化に注力し、他のマーケティング活動等の統合を行っています。このグループにとっての次の大きなステップは、組織の中の誰がソーシャルアプリケーションを使い、顧客の問題を解決し、ソーシャルメディアに関わる全社員のプランニングを手助けするのに最適かを決めることです。

イノベーター(革新者):権限移譲段階
この段階では関係のある全社員がトレーニングを積み、ソーシャルメディアを活用するのに権限移譲がされています。中核となる研究組織は必要ですが、「組織化された配置」が根本的になされています。(例えばZapposのような)ごくわずかな企業がちょうどこの段階に入ったところですが、より多くの企業が後に続くことを期待しています。

確かにZapposのように500名近くの社員のTwitterアカウントを公開し、有名なコアバリューのもと権限委譲ができているのは、理想郷の域と言ってもいいと思います。

一方で、Zapposのように全社員上げて顧客とのコミュニケーションを重視しているわけではない一般的な企業にとって、イノベータへの道のりはとても遠そうです。。。

ちょうどZapposの話になったので、最後にオマケ。以前のエントリ「Guy Kawasaki氏によるZapposのCEO、Tony Hsieh氏のインタビュー:企業家精神、Amazonへの売却、家族、そして幸せについて」からの抜粋です。

Q: 顧客サービスは新しいマーケティングですか?
A: 新しくなったことは、全てが高度に接続し、情報伝播が以前よりもずっと早くなったことです(Twitterやブログなどを通じて)。顧客サービスのストーリーはそれがいいものでも悪いものでも、すぐに伝わり、企業ブランドにより大きな影響を及ぼします

Q: 普通の昔ながらの電話はZapposにおいてどんな役割ですか?
A: 私たちは電話は最高のブランディング機器だと思っています。顧客との集中をした時間を5〜10分間持つことができますが、30秒のスーパーボウルの広告では、視聴者はあまり集中していません。電話で正しいやり取りを行えば、顧客は長い間覚えてくれていて、友人や家族に私たちのことを話してくれます。

ソーシャルメディアの本当の(?)コストに関するinfographic:広める前に確認したいinfographicの真偽

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via focus.com

このThe Real Cost of Social Mediaというインフォグラフィック、少し前に出回っていたもので、紹介しそびれていたのですが、最近また遭遇したので、抄訳にてサラッとご紹介することにしました。一部間違いがあるようなので注を入れて正しいと思われるデータに直しています。

コスト
 
考慮すべき要素

 人件費:見過ごされがちなのが人件費。ソーシャルメディアキャンペーンの管理者がいない場合、そこに社員が使う時間をあなたが上手く回さなければならなりません。顧客からの問い合わせに対応し、クライアントや顧客のためにスパムがない状態を保つためのコミュニティマネージャーも同様に必要となります。

 外注費:外注する場合、かかる経費を一つ一つ理解しする必要があります。また、代理店ごとに異なる料金や戦略を理解し、結果どう影響があるかを理解しなければなりません。

 広告:ソーシャルメディアの最大の神話、それは「作れば人が集まる」です。Facebookページやtwitterのアカウントを持つだけでは、ほとんど得られるものはく、広告との連動が必要となります。Facebookのターゲット広告、Webサイトへのフォローボタンやメール広告などもそうです。

 その他:ほとんどのソーシャルメディアのツールは無料ですが、トラッキングのような詳細を知利たい場合追加でコストが必要になります。テックや、クリエイティブにもコストが必要になる場合もあります。

推定コスト(年間)
ソーシャルメディアストラテジスト:52,000ドル(1時間100ドルx週10時間)
コミュニティマネージャー:93,600ドル(1時間60ドルx週30時間)
特設サイト:15,000ドル
モバイルアプリ:20,000ドル
監視や第3者による評価:30,000ドル 
(筆者注1:micro-build siteが2回ありますが、元のデータをみるとそうではないことが分かります。)

 トータル:210,600ドル

◆利益
 
ソーシャルメディアの主な利益
 
顧客とのエンゲージメント 85.4%
顧客とのダイレクトな会話 65%
フィードバックの速さ 59.9%
顧客の嗜好理解 59.1%
低コスト 51.1%
ブランド構築 48.2%
市場調査 42.3%
仲間の信頼性 40.1%
リーチ 37.2%
見込み客の獲得 21.2%
カスタマーサービス 17.5%

 
Facebook
 
Facebookのファンのとファンでない人の平均利用単価比較(5社抜粋)
マクドナルド:ファン 310.18ドル/ファンでない 150.39ドル
コカ・コーラ:ファン 190.48ドル/ファンでない 120.98ドル
スターバックス:ファン 235.22ドル/ファンでない 110.95ドル
ナイキ:ファン 205.02ドル/ファンでない 83.69ドル
Xbox:ファン 173.34ドル/ファンでない139.46ドル

 Facebookのファンのとファンでない人の行動比較
Facebookのファンはファンでない人より、そのブランドの利用継続率が28%高い
Facebookのファンはファンでない人より、気に入っている商品を友人に薦める割合が41%高い

Twitter
 
Twitterフォロアーの価値 33,000のフォロアーがいるアカウントでの推定値
毎月のリターン:$2,382 
毎月の投資:$1,667 
(筆者注2:インフォグラフィック上の表記では逆になっていますが、それは間違いだと思われます。)
 
毎月の1フォロアーの価値:$2.38 
毎月の1フォロアーあたり単価:$1.67

 ROI 43%

 @DELLOUTLETの場合(Dellのtwitter活用の詳細はこちらをご参照)
Twitterフォロアーでツイート内のリンク経由でWebに来て購入:300万ドル
半年のツイッター経由の売上:100万ドル

 @OLDSPICEの場合(Old Spiceキャンペーンの詳細はこちらをご参照)
フォロアーの増加:2700%
Facebookファンの増加:800%
ブランドサイトへの流入:300%増加

このインフォグラフィックで紹介されているデータソースはeMarketerによる調査や、一企業の事例であったりと様々ですが、結構突っ込みどころが多かったので紹介なかったわけですが、「あえて」の意味も兼ねて書いてみることにしました。

・注1に見られるように情報の引用が不適切
・注2に見られるよう完全なケアレスミス
・Facebookのファンが購入額が相対的に高いのはもともとブランドのファンだから当然で、Facebook開始前後の比較などがないとROIは分からない。
・TwitterのROIが43%に関しては元データの詳細がなく、おそらく一企業の事例にすぎないと思われる。

などなど、ソーシャルメディアのROIという野心的なテーマでしたが、もう少し丁寧に作って欲しかったところ。

infographicの良い点は「メッセージのコントロールというInfographicsの価値:昨年3400%成長を遂げたFoursquareのInfographic」というエントリで以前書かせて頂きましたが、広まりやすい、という事に加え、特に多くの人を介して情報が伝わるのソーシャルメディアにおいて、(誤解などを生まないためにも)情報のコントロールを効かせられることにあると思うのですが、今回ご紹介したもののように、情報が不確実かつ扇動的なものもあるので、こういうデータを見る側としても、簡単に広めるのではなく正しい情報かどうか注意したいものですね

Engagement再考:「関わりと交流」だけではないその定義

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via flickr by michelle.parker52

ソーシャルメディアマーケティングにおいて、重要な指標とされる、"Engagement"。

もとはサルトルの用語で、フランス語(アンガージュマンと発音)。英語ではcommitmentと訳されることが多いそうなのですが、日本語にするのが非常に難しく、個人的には「関わりあいを深めること」という意味合いで使い、このブログでも幾度か取り上げてきました

筆者自身どうもまだ理解が足りないと感じているのですが、「Engagementという言葉を見直そう」というエントリがForrester reserchのブログで公開されていたので、抄訳にてご紹介。

2007年、Forresterが"Engagement"をマーケティングの主要な指標として提唱した際、このように定義していました。関わりの度合い(the level of involvement)、交流(Interaction)、新密さ(intimacy)そして影響(Influence)。

しかしながら、この言葉は現在、定義のうちの最初の2つ「関わりと交流」の意味で使われています。

有能なマーケターならこの2つだけでは結果に結び付けるには不十分だと分かっています。

よく見られるのがマーケターやエージェンシーがクリックや、訪問、滞在時間、ダウンロードなど様々な指標にすり替えていることです。これではビジネスの結果に結び付けることは到底できません。

だからこそ、「親密さと影響」というengagementの残り2つの定義が重要になります。なぜならそれは顧客の関心を得ることの(attention)インパクトを表しているからです。「親密さ」はブランド認知やブランドとの親和性、感情などの質的な側面を表しています。また「影響」はクチコミでの共有されやすさ(例:シェア率やネットプロモータースコア)を表しています。

ではどのようにしてEngagementを軌道に乗せることができるのか?

プログラムの目的を明確にして、様々な最新技術による指標に惑わされないことです。例えばセールスなら、交流を促し、購入して推薦してもらうためのEngagementが必要です。ブランドの場合なら、「関与、交流」の指標に加え、「新密さと影響」についても理解ができるアプリケーションが必要になります。そうすることで、マーケターもエージェンシーも事前に設定した目的に立ち返ることができます。

interactionやinvolvementのように、数字に置き換えやすい、すなわち投資に対して正当性を持たせる報告書に使いやすいものに意識がいってしまい、その数字は中身を伴っていない可能性もあります

とはいえ、感情分析をするためにブランドについて語られるコメントの全てを整理把握、分析するには多くの人的リソースを必要としますし、マニアックに追求しすぎてもそれは独りよがり。

有料の感情分析ツールなどを使うこともできますが、レポートのためにコストを割く、ということになってはちょっと本末転倒。

筆者自身が関与しているアカウントにおいては、全体的な傾向の把握(何が、どのように評価されているか等)を主に行い、ブランドに対する評価を文脈で追いかけるようにしています。

ソーシャルメディアにかけられるコストと、それに見あうEngagementの評価方法。

まぁ、なんというかこれという決定打が無い分、永遠の課題とも言えそうですが、会社や事業者、プロジェクト単位で設計して関係者がそれに納得するような合意形成をするしかないですかね

ソーシャルメディアに対する評価はポジションによって異なるべき:小さな勝利の積み重ねが全体に貢献するという考え方

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via blogs.forrester.com

ソーシャルメディアの話をする際について回るのがROIをどう考えるんだ、という話。

ただそのROI、立場によって見方も変わり、求められる情報も変わるのが当然。

フォレスターリサーチが最近発表したレポートに、そのことが記述されているようで、その一部が公開されていました。上の画像はどんな指標が誰に必要かを示したものです。

例えばソーシャルメディア担当の場合、

視点:デジタル
指標:ソーシャルな機会(ファンやフレンドの数、メンバーや訪問者数など)とソーシャルの健康度(投稿やコメント、感情など)
頻度:1時間ごとないしは一日ごと
ツール:傾聴プラットフォームやWeb解析ベンダー
 
マーケティング担当の場合、

視点:ブランド
指標:ブランディング(認知や購入意向など)と製品の試用(見込み客づくり、サンプリングなど)
頻度:キャンペーンごと
ツール:調査

取締役の場合

視点:財務
指標:売上(コンバージョン、顧客生涯価値など)
頻度:四半期または年に1度
ツール:CRMツールや調査など

とされています。

このチャートを紹介しているフォレスターのブログの説明もともても素晴らしいものでした。

なぜこの順にしたかというと、左から右に行くにしたがい、会社の重要ポストになり、またレポートの頻度も下がるためです。

ただ、もっと重要な理由は、それぞれのグループの成功には前のグループの成功が必要だからです。

コミュニティマネージャーのデジタルな指標は、ソーシャルメディアマーケティングの成功を示すものではありません。が、その指標は担当者のパフォーマンスを示すものであり、そこでの小さな勝利の積み重ねはマーケティングチームが成功するための土台となります

同じようにブランドや試供というマーケティングによるソーシャルメディアの指標はソーシャルメディアにおけるビジネスの成功を示すものではありませんが、マーケターがソーシャルメディアを有効活用できていることを示しており、企業としてソーシャルメディアから必要とする価値をそれなしに得ることはできません。

最後に、取締役が見る売上やその他の財務指標はそれ以前の過程での成功の上に立っています。

そう、だからTwitterで売り上げがこれだけ上がった!とかFacebookでものが売れた!なんて短絡的な指標ではなく(ソーシャルコマースは別だと思いますが)、全体の中でで果たしている役割や貢献についてKPIをたてて、一つ一つ見ていくことが重要なのだと思います。
 
蛇足になるかもしれませんが、話を分かりやすくするために、あえてスポーツを例にしてみるとこんな感じだと思います。

・ソーシャルメディアは「基礎体力/技術」
・マーケティングは「試合」
・取締役が見るのは「年間成績」

基礎となる体力や技術を養うためのKPI、試合におけるKPI、それぞれ性質が異なると思いますが、相互に強く関連しあっています。

また、スポンサー獲得や賞金などにかかわる財務指標が年間成績、と考えるとマーケティング全体として、ソーシャルメディアを含めてどれだけ勝利に貢献できたか、という評価になると思います。
 
こんな考え方、いかがでしょうか?
 

効果的なソーシャルメディア活用ができている12%の企業の共通点

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via sas.com

Harvard Business Reviewが、"The New Conversation, Taking Social Media from Talk to Action"という、企業によるソーシャルメディア活用の分析調査レポートを昨年の12月に発行していました。

レポートによると、対象となる2100の企業のうち、「効果的な活用ができている(効果的なユーザ)」と分類されたのは12%。そして、そこには共通する特徴があるとこのこと。

その共通点をまとめたエントリがあったので抄訳にてご紹介。

1. 効果的なユーザーの63%がソーシャルメディアの戦略をつくり実施していると回答。
  - 彼らはソーシャルメディアについて統合的な視点を有し、全体的なマーケティング戦略の一部としている。単に流行っているからとか、気まぐれではなく、文書に記された具体的な目標に向かって活用している。

2. 効果的なユーザーは、そうでない回答社の「2倍」のソーシャルメディア予算を持っている。

3. 効果的なユーザーは、ソーシャルメディアチャネルをより多く - 4つかそれ以上 - 使う。

4. 効果的なユーザーは複数のソーシャルメディアチャネルを使うことでその恩恵を最大限に活用している。例えば、
  - 顧客へのリーチ
  - 顧客の理解
  - 新製品のリサーチ
  - 顧客同士でユーザーグループを作る
  - トレンドのモニター
  - 顧客の評価を集計、追跡する

5. 指標や分析ツールを使用することが、彼らを効果的なユーザーたらしめている。自分たちの活動の評価だけでなく、自社に関するソーシャルな会話の評価もしている。

6. このグループはソーシャルメディアの傾聴を他のマーケティングソリューションに統合している。

「ソーシャルメディア予算が2倍」という箇所に自然と目が行ってしまいますが、より多くのソーシャルメディア活動を行うほどそのリターンは大きい。ただし、明確な戦略やマーケティング全体における明確な役割の設定が前提ということに集約できそうです。

とはいえ、多くのソーシャルメディア活動を行うには、人件費を含むコストが必要なのもゆるぎない事実。

予算の確保ができていない企業においては、ソーシャルメディアを活用できそうな分野を絞って効果を確認し、少しづつ予算を増やしリターンを積み重ねていく、という努力が必要なのかもしれないですね。

ソーシャルメディアは、「職」ではなく「スキル」:共有すべきソーシャルメディア・スキル

Skill

via flickr by Extra Ketchup 

先日のエントリ、「ソーシャルメディア担当が特別な意味を持たなくなる時:Social media editorを廃止するThe New York Times」が、思いのほか多くの反響を呼び、ソーシャルメディアの担当者、ということについては、多かれ少なかれ問題意識が生まれつつあるのかな、ということが感じられました。

特にその趣旨である「ソーシャルメディアは一人の人に属するものではありません。全員の仕事の一部であるべきですに共感された方が多かったようです。

さて、「それはそうだと思うけど何から始めようか」というのが次の疑問になると思いますが、書籍"THE NOW REVOLUTION"(日本語訳が出たら「なうの革命」という邦訳がつくのだろうか、、、)の共著者のブログに参考になるエントリがあったので抄訳にてご紹介。

分散させるべき5つの重要なソーシャルメディア・スキル
  
社員全員が好むと好まざるとにかかわらず、マーケティングに携わっています。
ソーシャルメディアは、「職」ではなく、「スキル」になる必要性が高まってきています。

1. ブランドの浸透と表現
かつては、マーケティングやPRが表向きの外観を作り上げていました。今は、全員に(ブランド)ガイドラインを共有し、彼ら自身のやり方でブランドを表現する必要があります。

2. 成功の測定
一部の社員がソーシャルメディアでのインパクトを計測するのではなく、全ての社員に測定方法が共有されるのがベストです。共有することで繋がりを感じ、結果への投資を感じ、自分の活動がどのように違いを生み出しているか理解できます。

3. 傾聴
自分の会社や部門、業界がどのようにソーシャルメディアでの会話に影響されているかを理解するのは普遍的な義務です。が、これもすぐに一部の人が負うだけでは済まなくなり、各部門ごとに合う目的で傾聴をおこなう必要があります。

4. 社内でのストーリー作り
機会をとらえて絶え間なくストーリーを語れるようになることは重要。1-2名の担当では、幅広くカバーすることは難しいので、受付から製造、ITまで全社員に寄稿を促すようにしましょう。そのためにはアイディアなどを共有する社内コミュニケーションのツールが必要です。

5. エンゲージメント
ソーシャルメディア担当が既存・見込み顧客とのほとんどのコミュニケーションを行うと思いますが、それが全てではありません。1-2人のソーシャルメディアのスペシャリストがオンラインのタッチポイントの全てを管理しているだけでは、時に(会話の)流れは急で広すぎます。他の社員から有志を募り、教育を施して参加させましょう。
 
ここで問題になるのは、やはり多くの社員が使用する時間とそれに対するリターンの正当化、だと思います。

ソーシャルメディアのROIについては(歴史のある)PRのROI同様、まだ確立されていません(Grouponのようなソーシャルコマースは別ですが)。

【ROI関連エントリ】

経営層が意欲的、という状況でもないとここまで全面的に実施する体制は作れないと思います。 とはいえ、コミッティを立ち上げる、コンテンツを社内から募る、傾聴の目的を各部門別に最適化する、などの小規模な拡大を通じて、間接的に関与する人を増やすことは可能だと思います
 
こうしたことはすでに実施しているところもあるでしょうし、そうでないところの場合、これもスタートスモール、ですかね。 

また、@gosuke さんが、「“ソーシャル メディア担当” の行く先」と題した連載をされているので、そちらも是非ご参考にしてみてください。

ソーシャルメディアで最も効果的なマーケティングコミュニケーションは「普段の会話」:Stream marketing が今後重要に

  
"May the 4th Be With You."

これは、BlackBerryのTwitterアカウントから、5月4日の「スターウォーズデー」に発せられたもの。BlackBerryとスターウォーズには実際これといった関係がないにもかかわらず。

この投稿は15万人にリーチし、その98%がポジティブな反応で、ほとんどのツイートがブランドをポジティブに関係付け、15%のフォロアーの増加につながった。(BlackBerryのGlobal Digital VPのBrian Wallace氏)

このエピソードは、Advetising Ageの「FacebookではRelevanceが再定義されるかも」という記事に紹介されていたものです。

What are you doing this weekend?
What is your ideal vacation?
What's your favorite movie or book?

記事では、実はこういった普段の会話が最も大きな関与(Engagement)を生む、と書かれています。

実際に、ソーシャルネットワーク上の多くの人はあなたの製品について話したいわけではなく、単に話がしたいのです。ブランドをソーシャルメディアで語る際には、会話的な雰囲気が必要なことは以前から理解していたものの、実に会話的であることに驚かされます。ソーシャルネットワークサイト上で最も効果的なマーケティングコミュニケーションが、シンプルで、ランダムで、暦と関係した陳腐な発言や質問、ブランドとは無関係の思いつきの質問などであることが次々と証明されています

11月11日の復員軍人の日にFacebookで行ったBlackBerryのシンプルな投稿は、8,000近くのLikeと550のコメントを生んでいます。

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同じような例が、OREOのファンページからも紹介されていました。

フォークや他のものを使ってオレオを飲み物に浸して食べた(Dunk)ことはありますか?> 8,200のLike! と2,300のコメント
 
どんなフレーバーでもいいので、オレオの新フレーバーを作るとしたら何にしますか?> 7,100のLikeと12,500のコメント
 
抜き打ちテスト:Twist、lick、それから...>6,500のLikesと6,200のコメント

たしかに驚くような数字がシンプルな投稿に対してつけられています。

8,000人にブランドのために何かしてもらうことは実際簡単ではありませんでしたが、TwitterやFacebookはそれを変えるかもしれません。

ファンページの数が多いので(BlackBerryが約390万、OREOが約1500万以上)、割合としては大きくはありませんが行動を起こした人の絶対数を考えると、やはりこれはすごいことだと思います。

記事には他にも印象的な言葉やフレーズがあったので最後にまとめてご紹介。

"Stream marketing" が今後重要になる。

コンテンツは会話的なものに向かうべきだ。

見た目は行き当たりばったりに見えるメッセージが、結果的には企業ブランドや行動の目標にどれだけ貢献するかを理解できるようにならなければならない。

Facebookのファンには何の意味はない。Facebookのファンに何かしてもらうことに意味がある

握手の対価:ソーシャルメディアでの対話のROI

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via flickr (by  Aidan Jones)

先ごろ開催されたWorld Business Forumで、グランズウェルの筆者として有名な、Charlene Li氏がソーシャルメディアのROIについて興味深い話をしたそうです

公演の途中、彼女は全聴講メンバーに隣の人と握手をするようにお願いしました。そして、彼女は彼らにその握手のROIを説明するよう求めました

これはさすが、ですね。

握手=社交的行為の象徴のようなものであり、ソーシャルメディアを企業が活用することの意味をわかりやすく例えています。

人と挨拶をすること
人と食事をすること
人と飲みにいくこと
人とゴルフをすること

こうしたことはすべて社交的な行為であり、ROIを出せ、というのは無理があるということは理解できるでしょう。

社交的に行動することで、突然よい話が関わり合いのある人から舞い込んでくるかもしれないし、何もないかもしれない。接待を通じて商談がまとまるかもしれないし、まとまらないかもしれない。

でも人付き合いを通じて蓄積されるものは確かにあります。

ソーシャルメディアは直接目に見える利益を生む場合もあり、ネットの世界でのできごとなので、どうしても計測し、数値化することが当たり前のような感覚になりがちですが、バナー広告やリスティングのようなものとは異なり、エクセルで管理できるようなものではありません。

では、どうすればいいのか。

ソリューションはいたってシンプル。ソーシャルメディアでやろうとしていることを比較するのをやめ、測定方法の比較をやめること。

その代わり、ネットワーキングのイベントへの参加についてどのように考えるか、ソーシャルメディアの価値について考え始めること。カスタマーサービスや、ロイヤルティの分野において、既存の顧客とどのように関わり合い、自社についてどう語り、何度もリピートしてもらうか。こうした活動に対するROIは大きいものです。もっとも細々と管理されたエクセルの表にはそぐわないでしょうが。

昨日参加したセミナーで人事部にソーシャルメディアを使わせてみればいい、という発言がありました。直接的な収益貢献をそもそも期待されない分野であれば、ROIを明確化しようという発想にはならないので、面白いなと思いました。

収益を生むかもしれないものへのROI、目標値は設定できても、それは評価の一部でしかないと思います。

ご参考

Grouponを利用して失敗した、と主張するちょっと話題になった小さな事例

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via flickr.com

筆者はこれまでいわゆるGroupon系のフラッシュマーケティングといわれる分野にはあまり興味がありませんでした。というのも単に自分が所属する組織ではその仕組みがワークしそうにないからです。

ただ、わずか数ヶ月の間で、レッドオーシャン化した市場であり、また、この不況の世相を反映して、「安く買える!」、「ツイッター活用」などがキーワードになって情報番組などのマスメディアで取り上げられるのを目の当たりにして、PRパーソンとしても、気にかけないままというのもよろしくないのかなと思い始めたところ、Grouponを利用して失敗した、というエントリが先週ちょっと話題になっていました。しかもエントリには88ものコメントがついています。

あくまでもアメリカでの一事例で、もうすこし数字の部分でクリアな情報が欲しい内容ですが、色々と気になる部分もあったので抜粋しながらご紹介。

エントリの筆者Jessie氏は、Posies cafeの経営者。多くのすばらしい企業がGrouponを有効活用しているのを知って、営業マンとの商談を開始。商談は$13の商品を6$で売ることから始まったのですが、営業マンのJohn氏が言うには、その理由は、

50%以上の値引きに、人々はよく反応するから

because John told me people really respond to deals that are over 50% discount.

とのこと。その後、売り上げの配分率について話したところ、

消費者の消支払いが$10に満たない場合、通常Grouponが売り上げの100%を受け取る。

John told me that when the consumer pays less than $10, Groupon usually takes 100% of the money.

と聞かされたそうです。

John氏曰く、ほとんどの消費者は$13以上購入するし、彼らのネットワークを活用すれば二度と広告をする必要が無くなる、との営業トークを行ったようです。

その話自体は疑わしいと思いつつも、最低でも50%は確保するべきと考えたJessie氏。その理由は、

今日までなぜ50%が良い条件だと思ったのかわかりませんでした。多分、食品コストをカバーできるからと考えたからです。

to this date I don’t know why I thought even 50% would be a good deal for us. Maybe because I thought since we were covering our food costs.

とのころですが一方、人件費や、賃料、公共料金などのコストを含めて考えていなかった、事前のROIの分析が甘かったと本人は反省しているようです。

実施後、売れたクーポンは約1000枚。結果にハッピーだったかというとそうでもないようで、まず、

売る数の上限を決めて損失を抑え、ビジネスを守ることができなかったのか、というと答えは単純で、「ノー」。Grouponに登録するときに、売れた分だけ販売することに合意することになっているのです。なぜかといえば、Grouponは売り上げの半分を得ることができるからです。

if there was a cap on how many were sold to help protect the business from too much loss, and the simple answer is, no. When you sign up for Groupon, you are agreeing to sell as many as get sold… and why would Groupon want it any other way? They get half of the earnings.

と売りたい以上に売れてしまった模様。

さらに、悲劇的な心情が文面に表れているのがここ。

Grouponが有効だった6ヶ月以上もの間、多くの本当に多くの素敵なお客様にあうことができ、Posiesファミリーに迎えることができて、とても幸せでした。同時に、多くの、本当に多くのひどいGroupon客もいらっしゃいました。

Over the six months that the Groupon is valid, we met many, many wonderful new customers, and were so happy to have them join the Posies family. At the same time we met many, many terrible Groupon customers…

どうひどいかというと、Grouponのルールを守らず、一回の食事で何枚ものグルーポンを使おうとしたり、そのことについて嫌悪感をあらわに議論をしたり、実際に払った分の10%でチップを払おうとしたりする客(支払い0ドルの場合、10セント払うのはとても太っ腹)がいたそうです。

最終的に$8,000の損失となり、キャッシュフローを維持するために、個人の貯金から支払いをする羽目になった、ということでした。普段から広告のROIをあまり信用していないJessie氏としては、損失を宣伝のための投資として割り切ることもできなかったようです。

さて、グルーポン自身の調査によると、同社のクーポン利用後に再び同じ店を訪れる客は22%というデータがあるようですが、実際に結果に満足しているビジネス側はどの程度なのでしょうか?

個人的に記事やテレビを見た限りでは、「リーチできなかったお客さんに知ってもらえる」、「再来店してもらえる」、「出品内容以上に購入してもらえる」というのが経営判断としてフラッシュマーケティング実施に踏み切る大きな理由のようです。

ここで、PRをやってきた人間として頭をよぎるのが、10数年前に起きた「懸賞ブーム」。企業は自社製品を広く知ってもらう、ファンになってもらう、などの目的でプレゼントパブリシティを展開し、懸賞雑誌が生まれ、電波少年的懸賞生活なる企画がテレビでオンエアされていたほど。

その流れは提供された商品のレビューやブロガー試食会などを行うブロガーリレーションに引き継がれ、今度はバーゲンハンターが集まるフラッシュマーケティングに、、、と思ってしまうのは筆者だけではないのでしょうか?

出品内容や目的によって結果のリターンは異なると思いますが、良い結果、悪い結果ともに実際やってみてどうたったのかの開示が日本でも今後なされていくことを期待したいところですね。